
防災備蓄シリーズの14本目は、「家具の転倒防止」です。水・食料・トイレの「そろえる備え」に対して、こちらは「家の中を安全にする備え」。お金も手間も、思っているよりずっと小さく始められます。
折しも、11月2日に発足する防災庁の「緊急要請」では、備蓄と並んで家具の転倒への備えも呼びかけられる見通しです。細野防災担当大臣は10月20日の記者会見で、国民への要請について「食事もそうですし、トイレもそうですし。あとは、例えば建物が倒壊しないように、もしくは家具なんかが落ちてこないようにという備えもそうですよね」と述べています(正式な要請文は11月2日に発表される予定で、本記事は発表前の情報です。要請そのものについては防災庁の「緊急要請」の記事にまとめました)。
結論:優先順位は「寝室→テレビ→食器棚・本棚」
- 東京消防庁の調査では、近年の地震でけがをした人の約3~5割が、家具類の転倒・落下・移動が原因でした
- 対策の順番は寝室が最優先。寝ている間は無防備で、反応も遅れます。次にテレビ・リビング、最後に食器棚・本棚・冷蔵庫
- いちばん確実なのはL字金具でのネジ止め。難しい場合は「突っ張り棒+ストッパー式や粘着マット」の組み合わせで効果が高まります(東京消防庁)
- 費用は1か所あたり1,000~3,000円ほどから。家じゅう一度にやらなくて大丈夫です
なぜ「家具」が危ないのか:転倒・落下・移動の3つ

内閣府の防災情報ページでは、地震のとき家の中の家具は「凶器」にもなりうると書かれています。危険は3つあります。
| 危険 | 起きること |
|---|---|
| 転倒 | タンス・本棚・冷蔵庫などが倒れて、下敷きや圧迫の原因に |
| 落下 | 食器・本・テレビなどが上から落ちて、頭や体に当たる |
| 移動 | キャスター付き家具や冷蔵庫が滑って移動し、人にぶつかる・避難路をふさぐ |
さらに、倒れた家具が出入口や廊下をふさぐと、火災のときや余震のときに逃げ遅れる原因になります。ストーブなど火気の近くに家具が倒れれば、火災の引き金にもなります。つまり家具の対策は、「けが防止」と「避難路の確保」の両方に効きます。
最初の一歩は「置き方」の見直しから

器具を買う前に、内閣府・東京消防庁が共通して勧めているのがレイアウトの工夫です。お金はかかりません。
- 寝る場所・座る場所のまわりに、背の高い家具を置かない。寝室にはできるだけ家具を置かず、置く場合もベッドや布団から離す
- 出入口と避難経路をふさがない配置にする。倒れた家具がドアを開けられなくする事故が起きています
- 家具の向きにも注意。倒れる方向にベッドやソファが来ない向きへ。引き出しが飛び出す向きも避ける
- 収納はクローゼットや作り付け収納に集め、生活空間に出ている家具そのものを減らす
- マンションの高層階は揺れが大きく長く続くため、「移動」対策も重要です(詳しくはマンションの防災の記事へ)
器具は4タイプ:家具ごとに使い分ける
| 器具 | 向いている家具 | ポイント |
|---|---|---|
| L字金具(ネジ止め) | タンス・本棚・食器棚など大型家具全般 | 最も効果が高い方法。Lの字が下向きになる向きで取り付ける。ただし壁の下地(柱・間柱)がある場所にネジを打つのが条件で、賃貸では事前確認を |
| ポール式(突っ張り棒) | タンス・本棚・冷蔵庫など、背の高い家具 | 家具を壁にぴったり寄せて、天井との間に両端の奥へ設置。ネジ不要で始めやすい。天井板が薄く弱い場合は、間に板を挟んで補強する |
| ストッパー式 | 突っ張り棒と組み合わせる補助 | 家具の手前下部にくさび状に挟み、家具を壁側へ少し傾ける。突っ張り棒との併用で効果が高まる |
| マット式(粘着・耐震マット) | テレビ・電子レンジなど比較的小さな家具・家電 | 底面に貼るだけ。有効期限があり、粘着が弱くなったら交換が必要 |
器具は「1つだけ」より「組み合わせ」が基本です。特に大きな家具は、突っ張り棒だけで安心せず、ストッパー式や粘着マットを足すと安定感が変わります。
場所別:この順番で進める
1か所目:寝室のタンス・本棚(突っ張り棒)

最優先は寝室です。設置のコツは、家具を壁に寄せる、棒は両端の奥に、天井が弱いときは板を挟む、の3点。家具転倒防止の伸縮棒は2本1組で約1,500~2,500円が目安です(価格は目安で、時期や店舗で変わります)。
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2か所目:テレビ(転倒防止ベルト・耐震マット)
薄型テレビは軽く見えて、倒れると画面も体も危ない相手です。テレビ台へクランプで留めるベルト式、テレビ背面のネジ穴(VESA)を使うタイプ、台との間に敷く粘着マット式があります。穴あけ不要のタイプが多く、賃貸でも始めやすい場所です。ベルトは約1,000~2,000円、耐震マットは約800~1,500円が目安です。
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3か所目:食器棚・本棚・冷蔵庫
食器棚は「家具の固定」と「中身の落下防止」の二段構え。棚板に滑り止めシートを敷き、重い食器は下段へ。観音開きの扉には、揺れで開かないラッチやストッパーを。冷蔵庫は壁に寄せ、転倒防止ベルトや突っ張り棒で補助します。小物・家電まわりには耐震マットが便利です。
- 賃貸住宅では、壁や天井にネジ穴を開ける前に、管理会社や大家さんへ確認を。ネジ不要の器具から始める手もあります
- 突っ張り棒は天井の強さが前提です。天井板がたわむ家では、板を挟んでも力が逃げます。設置後に家具を軽く押して、ぐらつきを確認してください
- L字金具のネジは、壁の石膏ボードだけに打っても抜けます。下地のある位置を探すのが大事です
- 対策は「やったら終わり」ではありません。器具の緩みやマットの劣化を、備蓄の点検サイクルと一緒に年2回見直すと続きます
- 寝室に、倒れたら布団に届く背の高い家具がないか
- タンス・本棚は壁に寄っているか。突っ張り棒に緩みはないか
- テレビにベルトやマットの対策があるか
- 食器棚の重い食器が下段に移っているか。扉の開き留めはあるか
- 出入口と廊下のそばに、倒れると通路をふさぐ家具がないか
- 冷蔵庫の位置と固定。キャスター付き家具の移動対策
まとめ
- 近年の地震のけがの約3~5割は、家具類の転倒・落下・移動が原因(東京消防庁)
- 順番は寝室→テレビ→食器棚・本棚・冷蔵庫。まず置き方の見直しから
- 本命はL字金具のネジ止め。難しければ突っ張り棒+ストッパー・マットの組み合わせ
- 費用は1か所1,000~3,000円ほどから。緊急要請をきっかけに、まず1か所だけでも
この記事は「家と家族を守る」防災備蓄シリーズの14本目です。あわせてどうぞ。
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