
防災備蓄シリーズの12本目は、「マンションの防災」です。備蓄の基本の数字は戸建てと同じですが、マンションには落とし穴が3つあります。エレベーター、水、トイレ。高層階ほど、この3つが同時に止まる構造になっています。
東京都も、マンション居住者は被害が軽微なら「在宅避難」が可能としつつ、各家庭の備えが前提だと案内しています。つまりマンションの防災は、「家に残れるかどうか」ではなく「家に残れる備えがあるか」で決まります。
結論:マンションは「止まる3つ」への備えが先
- マンションで止まるのは3つ:エレベーター(停電で停止)、水(給水ポンプが止まれば断水)、トイレ(排水管の安全確認が終わるまで流せない)
- 地震のあと、水が出ていてもトイレは流さないのが鉄則。上の階が流すと、下の階で汚水があふれる恐れがあります(東京都)
- だから携帯トイレは戸建てより厚めに。在宅避難の7日分(1人35回分)を最低ラインに、確認まで長引く前提で上乗せを
- 生活用水の主戦力は浴槽の約200リットル。給水所の水を階段で運ぶのは想像以上に重労働なので、備蓄は「家の中」に置くのが基本です
マンションで止まる3つのこと
1. エレベーターが止まる

停電すれば、非常用電源のないマンションではエレベーターは止まります。動いていても余震で閉じ込められる恐れがあるため、復旧までは階段が前提です。2リットル×6本の水のケースは12キロ。これを10階以上まで運ぶのは、訓練でもない限り現実的ではありません。「足りなくなったら下で調達する」という計画は、高層階では成り立たないのです。
2. 水が止まる
受水槽や給水ポンプで各戸へ水を送る方式のマンションでは、停電と同時にポンプが止まり、断水します。飲料水は備蓄でまかない、生活用水は浴槽の水が頼りです。浴槽1杯は約180〜200リットル。手洗いや清掃には十分な量ですが、飲用には使いません。
3. トイレが流せない
- 大地震のあとは、排水管の安全が確認できるまでトイレを流さない(東京都・各区共通の案内)。配管が壊れた状態で上の階が流すと、下の階で汚水が漏れたりあふれたりします
- 「水が出るから大丈夫」という自己判断が事故のもと。流してよいかどうかは、管理組合や管理会社のお知らせで確認します
- 安全確認のあと、バケツの水で流す方法もありますが、1回に約6〜8リットルの水を使います。4人家族が普段どおり流せば1日で約80リットル。浴槽の水でも数日しか持たない計算です
在宅避難を続けるための数字

基本の数字はシリーズ共通です(まとめ記事の早見表参照)。水1人7日分21リットル、食料21食、携帯トイレ35回分。マンションでは、ここに3つの上乗せを考えます。
| 項目 | 戸建ての目安 | マンションでの考え方 |
|---|---|---|
| 携帯トイレ | 1人35回分(7日) | 排水管の確認まで長引く前提で、50回分など厚めに。使用後の保管場所とにおい対策も決めておく |
| 生活用水 | 浴槽の水を活用 | 浴槽約200リットルが主戦力。給水タンクに小分けして使う。飲料水とは完全に分ける |
| 運搬の備え | あまり意識しない | 給水所の水を受ける給水タンク・給水袋と、背負えるリュック。10リットル=10キロが「階段で運べる上限」の目安 |

マンションの備えは3タイプ
タイプ1:給水タンク・給水袋型
折りたたみ式の給水タンク(10〜20リットル)は、給水所で水を受ける、浴槽の水を移して使う、の両方に使えます。平時は小さく畳めるので、狭い収納でも置けます。選ぶ基準は「満水で何キロか」。階段で運ぶなら10リットル前後が現実的です。1,000〜3,000円ほど。
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タイプ2:携帯トイレ厚め型
マンションの生命線です。100回分の大容量セットや、防臭袋が充実したタイプを選びます。使った後の保管はベランダや玄関の密閉容器に。におい対策まで含めて「トイレの備え」です。50〜100回分で5,000〜10,000円ほど。
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タイプ3:家具固定・安全型
高層階は、大きな地震で揺れが増幅されやすく(長周期地震動)、家具の転倒や移動が起きやすくなります。突っ張り棒や転倒防止器具、ガラス飛散防止フィルムは、在宅避難の大前提「部屋が安全なこと」を守る備えです。避難路になる玄関まわりの家具から固定してください。1か所1,000〜3,000円ほど。
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- 自分のマンションの給水方式(ポンプで送る方式か)と、非常用電源の有無を確認したか
- 管理組合の防災ルール(トイレを流せる判断は誰が出すか)を知っているか
- 給水タンクは、満水の重さを階段で運べる大きさか
- 携帯トイレの使用後の保管場所(におい対策つき)を決めているか
- 備蓄棚は「部屋の中」に置き、エレベーター前提の置き場所になっていないか
まとめ
- マンションで止まるのは、エレベーター・水・トイレの3つ。在宅避難の備えが前提
- 地震のあとは、排水管の確認までトイレを流さない。携帯トイレは厚めに用意
- 生活用水は浴槽の約200リットル。給水は階段運搬になるので、備蓄は家の中に
- 高層階は家具固定も必須。部屋の安全が、在宅避難の土台です
この記事は「家と家族を守る」防災備蓄シリーズの12本目です。あわせてどうぞ。
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