
防災備蓄シリーズの8本目は「非常用持ち出し袋」です。これまでの7本は、水も食料もトイレも「家に置く備蓄」の話でした。今回は逆に、家を出なければならないときの「持って出る備え」です。
考え方はこれまでと正反対で、増やすのではなく厳選すること。基準はただひとつ、「自分で背負って歩けるかどうか」です。重さの目安と、家の備蓄からの詰め方を整理しました。
結論:持ち出し袋は「背負える量」だけを厳選
- 持ち出し袋の中身は、避難先で1〜2日過ごすための最小限。7日分の備蓄は家に置くもので、袋に入れるのはその「厳選版」です
- 重さの上限の目安(政府広報オンライン)は、成年男性で約15kg、成年女性で約10kg、子ども・高齢者で約6kg
- 形はリュック型一択。両手が空いて、子どもと手をつないだり足元を照らしたりできます
- 置き場所は玄関や寝室など「逃げる通り道」。車にも分散しておくと、家の倒壊で取り出せない事態に備えられます
まず重さ:上限は「背負って走れるか」で決まる

持ち出し袋の失敗で一番多いのは、安心したくて詰め込みすぎることです。水は1リットルで1kgあります。7日分の水21リットルをそのまま入れたら、それだけで男性の上限も超えてしまいます。
| 背負う人 | 重さの目安(上限) | 感覚の目安 |
|---|---|---|
| 成年男性 | 約15kgまで | 背負って小走りできること |
| 成年女性 | 約10kgまで | 階段を上り下りできること |
| 子ども・高齢者 | 約6kgまで | 自分の分は自分で持てること |
目安は政府広報オンラインの防災特集によるものです。詰め終わったら一度背負って、家の中を歩いてみてください。「これで避難所まで歩けるか」が判断基準です。
- 水と食料は「7日分」ではなく「1〜2日分」。残りは家の備蓄と、避難所の支援物資が引き受けます
- 缶詰は重いので、持ち出し分はレトルトや栄養補助食品など軽いものに寄せる
- 「念のため」は際限がありません。迷ったら「今夜1泊するために要るか」で判断を
中身は5カテゴリで考える
消防庁の非常持出し品チェックリストをもとに、カテゴリごとに整理すると抜けがありません。量は「1人・1〜2日分」が基準です。
1. 水・食料
飲料水は500mlペットボトル2〜3本(約1〜1.5リットル)。食料はそのまま食べられるものを3〜4食分(レトルトご飯、栄養補助食品、アメやチョコレートなど)。
2. 明かり・情報
懐中電灯(またはヘッドライト)、手回し充電ラジオ、モバイルバッテリーと充電ケーブル。5本目の記事で分けた「明かりの3役」のうち、持ち出しは「移動」と「作業」担当です。
3. 衛生・トイレ
携帯トイレ5回分(1本目の記事で計算した1日5回分)、ウェットティッシュ、マスク、歯ブラシ、ポリ袋、生理用品など家の事情に合わせたもの。
4. 貴重品・いのちに関わるもの
現金(小銭も)、身分証明書のコピー、常備薬とお薬手帳のコピー、予備の眼鏡。小さいけれど、避難所で困るのは実はこのカテゴリです。
5. 衣類・防寒
着替えと下着1セット、軍手、タオル、雨具、アルミブランケット1枚、カイロ数枚(7本目の記事の備蓄から少しだけ分けます)。
家の備蓄からの「厳選表」
シリーズで計算してきた数字と、持ち出し袋に入れる量を並べるとこうなります。家にそろえた備蓄の中から、ほんの一部だけをリュックに移すイメージです。
| 品目 | 家の備蓄(7日分・1人) | 持ち出し袋(1〜2日分・1人) |
|---|---|---|
| 水 | 21リットル | 500ml × 3本(1.5リットル) |
| 食料 | 21食 | 3〜4食 |
| 簡易トイレ | 35回分 | 5回分 |
| カイロ | 21枚 | 4〜6枚 |
| 電源 | ポータブル電源1000Wh | モバイルバッテリー1台 |
| 明かり | ランタン・懐中電灯・ヘッドライト | 懐中電灯かヘッドライトを1つ |
「せっかくそろえたのに、少ししか持っていけない」と感じるかもしれません。でも、家に残した備蓄は無駄ではありません。在宅避難ができるならそちらが本命で、持ち出し袋は「家にいられない場合」の保険です。役割が違うのです。
持ち出し袋は3タイプ

タイプ1:全部入り防災セット型(防災士監修・1人用)
リュックに必要なものが一通り入って届くタイプ。何を入れるか考える時間がない人、いちばん手早く済ませたい人向きです。価格は1人用で15,000〜20,000円前後が中心。届いたら必ず開けて、自分の薬や眼鏡など「家の事情」の分を足してください。セットの食料・水は最低限なので、家の備蓄との重ね合わせも忘れずに。
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タイプ2:リュック+基本セット型(30点前後のお手頃セット)
基本グッズがそろう普及価格帯で、1人用6,000〜11,000円ほど。食料と水が少なめの製品が多いので、そこだけ家の備蓄から足す前提で選ぶと失敗がありません。家族分をそろえるときの現実解はこのタイプです。
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タイプ3:リュック単体+家の備蓄から詰める型
リュックだけを買い(3,000〜6,000円ほど)、中身はこのシリーズでそろえてきた備蓄から厳選して詰めるタイプ。いちばん安く済み、中身を自分で把握できるのが強みです。選ぶポイントは、背負いやすさ(肩ベルトの厚み)、容量30リットル前後、反射材や止水ファスナーなどの夜間・雨天対策です。
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置き場所と点検の習慣

- 置き場所は玄関・寝室など避難経路の上。余裕があれば車にも1つ分散
- 点検は年に2回。食料と水の期限、電池の残量、カイロの期限をまとめて確認
- 詰めたら背負って歩くテスト。重ければ「中身を減らす」のが正解
- 家族全員が置き場所を知っていること。子どもには自分のリュックを持たせると安心感が違います
点検のタイミングは、防災の日(9月1日)と3月11日など、覚えやすい日に決めておくと続きます。シリーズでそろえてきた備蓄の期限チェックと、同じ日にまとめるのがおすすめです。
まとめ
- 持ち出し袋は1〜2日分。重さの上限は男性約15kg・女性約10kg・子ども高齢者約6kg
- 中身は5カテゴリ(水・食料/明かり・情報/衛生・トイレ/貴重品/衣類・防寒)で抜けなく
- 家の備蓄からの「厳選」が基本。セット品を買う場合も、家の事情の分は必ず足す
- 置き場所は避難経路の上、点検は年2回、背負って歩ける重さかテストする
この記事は「家と家族を守る」防災備蓄シリーズの8本目です。あわせてどうぞ。