
この記事は、詐欺対策シリーズの第3弾です。第1弾(記事713)は偽SMSと偽メール、第2弾(記事891)はSNS広告が入口でした。今回の入口は「警察を名乗る電話」です。
11月2日には、富山県の60代女性が「逮捕状が出ている」とビデオ通話で偽の逮捕状を見せられ、指示されるまま3回に分けて約726万円を振り込んでしまった、というニュースがありました。決して他人事の手口ではありません。警察庁の統計では、警察官をかたって捜査名目でお金をだまし取る「ニセ警察詐欺」だけで、2025年に11,014件・被害額1,005億円。特殊詐欺全体の被害額の約7割を、この手口ひとつが占めています。
結論:電話で「捜査対象」「逮捕」と言われたら、その場で切る
- 見分け方はシンプルです。電話で「あなたは捜査対象です」「逮捕状が出ています」と言われた時点で、相手が誰を名乗っていても詐欺と判断して切ってください(警察庁)
- 本物の警察は、電話で捜査対象だと伝える、SNSで連絡する、警察手帳や逮捕状の画像を送る、お金の送金や出金を求める、のどれも絶対にしません
- 切ったあとは、相手に教えられた番号ではなく、警察相談専用電話「#9110」か、最寄りの警察署の番号を自分で調べてかけ直す
- 被害は高齢者だけではありません。2025年の認知件数は30代が最多でした。「若いから大丈夫」は通用しません
手口の流れは5ステップ

政府広報オンラインと警察庁の注意喚起をもとにすると、手口はほぼ決まった流れで進みます。
- ステップ1 前振りの電話:電話会社や総務省を名乗り「携帯電話の未納料金がある」「あなたの電話が犯罪に使われた」などと告げる。不在着信に折り返させて始まるケースもあります
- ステップ2 警察官に交代:「県警の○○です。あなたの口座が犯罪に利用されています」「逮捕される可能性があります」と不安をあおります
- ステップ3 SNSとビデオ通話へ誘導:LINEなどのメッセージアプリに移り、ビデオ通話で「取調べ」が始まります
- ステップ4 偽の警察手帳と逮捕状:顔写真入りの警察手帳や、自分の名前が書かれた逮捕状の画像を見せて信用させます
- ステップ5 お金の要求:「口座を調査する」「犯人に渡る前に、警察が用意した口座にお金を移して」などと言って、ネットバンキングでの送金や現金の引き出しを指示します
ポイントは、ステップが進むほど「本物らしく」見える仕掛けが増えることです。だからこそ、見分けるタイミングは最初の一言。電話口で「捜査」「逮捕」の言葉が出た瞬間が、切るタイミングです。
数字で見る被害:1件あたり約920万円、被害は30代が最多

警察庁の2025年(令和7年)確定値では、特殊詐欺全体が27,832件・1,423億円と過去最悪でした。その中でニセ警察詐欺は11,014件・1,005億円。1件あたりの被害額は約920万円で、ほかの特殊詐欺の平均の3倍以上です。「逮捕を免れるため」「口座を守るため」と言われて、全財産に近い金額を動かしてしまうからです。
意外なのは年代です。認知件数は30代が2,239件で最多、次いで20代が1,718件。ビデオ通話やSNSに慣れた若い世代ほど、画面越しの「警察官」を信じてしまう傾向が見えます(被害額では70代・60代が大きく、件数と金額で顔ぶれが違います)。
もうひとつ、電話番号の特徴があります。2025年に特殊詐欺で使われた電話番号のうち、約75%が「+」から始まる国際電話番号でした。末尾が「0110」の番号も多く確認されています。国際電話番号からの着信は、それだけで強い警戒サインです。
見分け方:本物の警察が「絶対にしないこと」
- 電話で「あなたは捜査対象です」「逮捕されます」と伝える
- LINEなどのSNS・メッセージアプリで連絡してくる
- 警察手帳や逮捕状の画像を送る、ビデオ通話で見せる
- 「口座を調べる」「お金を移して」など、送金や出金、現金の手渡しを求める
逆に、本物の警察が市民に用があるときは、警察署への出頭をお願いしたり、自宅を訪問したりと、対面が基本です。電話だけで完結する「捜査」はありません。
なお、最近は実在する警察署の電話番号を画面に表示させる偽装も確認されています(警察庁)。番号表示が本物らしくても、その番号が本物だとは限りません。表示は信じず、いったん切って、自分で調べた番号にかけ直してください。
かかってきたら、やることは3つ

- 1. 黙って切る:言い返す必要はありません。「逮捕」という言葉が出たら、その場で切って大丈夫です。本物の警察なら、あとから正式な形で連絡が来ます
- 2. 相手の番号にかけ直さない:相手が教えた「警察署の番号」は、詐欺グループにつながる番号かもしれません
- 3. 自分から確認する:警察相談専用電話「#9110」、または最寄りの警察署の番号を自分で調べてかける。家族に「こんな電話があった」と話すだけでも、冷静さを取り戻せます
万が一、送金してしまったあとで気づいたら、時間を置かずに振込先・自分の銀行と警察へ連絡してください。富山の事例の女性も、新聞記事を読んで被害に気づきました。「もう遅い」と思わずに動くことが、被害を止める第一歩です。
電話が鳴る前の備え
いちばん効くのは、そもそも犯人と話さない環境づくりです。無料でできる対策として、固定電話は知らない番号には出ず留守番電話で受ける、国際電話の利用休止を申し込む(固定電話向けに無料の受付があります)、スマホは国際番号や非通知の着信を制限する設定にする、といった方法があります。そのうえで、道具の力を借りるなら次の3タイプです。
タイプ1:迷惑電話防止機能つき電話機
着信時に「この電話は録音されます」といった警告を流したり、通話を自動で録音したりする機能つきの電話機です。1万〜2万円ほど。警告アナウンスが流れる時点で、詐欺の電話の大半は切れます。実家の電話機をこれに替えるのが、親世代へのいちばん実用的なプレゼントです。
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タイプ2:通話録音機(後付け型)
今の電話機に取り付けて通話を録音するタイプです。5,000〜1万円ほど。電話機ごと買い替えたくない場合や、録音そのものが目的の場合に向きます。「録音しています」の一言が、相手への牽制にもなります。
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タイプ3:詐欺対策の本
手口は毎年姿を変えます。家族で1冊、最新の手口をまとめた本を共有しておくと、「ニセ警察って知ってる?」と夕食の話題ついでに確認し合えます。1,000〜2,000円ほど。離れて暮らす親にも、押し付けにならずに渡せる形です。
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まとめ
- ニセ警察詐欺は2025年に11,014件・1,005億円、特殊詐欺全体の約7割(警察庁)
- 電話で「捜査対象」「逮捕」と言われたら、その場で切る。それが正解です
- 本物の警察は、電話での通告、SNS連絡、手帳・逮捕状の画像提示、送金要求を絶対にしない
- 確認は相手の番号ではなく #9110 か、自分で調べた警察署の番号へ
- 着信の約75%は国際電話番号。「+」から始まる番号は強い警戒サイン
- 備えは「話さない環境」から。留守番電話の活用と、防犯電話機・録音機が効きます
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