
テレビなどで「サイバー攻撃が増えていて、セキュリティソフトが売れている」という話を見かけることが増えました。そこで、攻撃の今の様子と、個人がどこまで備えればよいのかを、確かめられた数字をもとにまとめました。結論を先に言うと、個人利用ならWindows標準のセキュリティでも基本的には足ります。ただし、足りなくなる場面と、ソフトでは防げない部分もあります。
ランサムウェア被害は半期で過去最多
ランサムウェアは、データを暗号化して使えなくし、元に戻す代わりに身代金を求める攻撃です。警察庁のまとめでは、2026年1月から6月の被害は35都道府県で123件。前年同期より7件増え、統計を取り始めた2020年下半期以降、半期として最多でした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 被害件数 | 123件(35都道府県・半期として最多) |
| 被害者の内訳 | 中小企業79件、大企業31件、団体等13件 |
| 業種別 | 製造業が37件で最多 |
| 感染経路 | VPN(仮想専用線)機器が最多 |
| 攻撃の前ぶれ | 脆弱性を探る不審なアクセスが、1IPアドレスあたり1日平均1万3687件で過去最多(前年同期比で約5割増) |
被害の約6割が中小企業という内訳を見ると、「狙われるのは大手の企業だけ」という考え方はもう当てはまりません。
企業の被害は「長期化」と「経営への直撃」
件数だけでなく、被害の重さも変わってきています。警察庁によると、被害の半数超が復旧に1カ月以上かかり、全業務が停止した会社も9件ありました。被害額は6割が1000万円を超えています。
トレンドマイクロが紹介した調査でも、ランサムウェアなどの攻撃から復旧するまでの業務停止時間の平均は、次のように延びています。
| 調査年度 | 業務停止時間(平均) |
|---|---|
| 2024年度 | 約10.2日 |
| 2026年度 | 約36.0日 |
長引く一因として、仮想化システムやデータセンターごと暗号化される事例が増えていることが挙げられています。
経営そのものを揺るがした例もあります。大分県の百貨店トキハは、2025年3月30日にグループがランサムウェア攻撃を受け、決算の発表が遅れました。その2025年2月期の決算では、約27億円の債務超過に転落したと報じられています。攻撃では最大で約42万件の会員情報などが閲覧された可能性があるとも公表されました。
個人に向けられる手口
攻撃の相手は企業だけではありません。個人がよく出会うのは、次のような手口です。
| 手口 | 内容 |
|---|---|
| フィッシングメール | 銀行、宅配、通販などを装ってリンクを開かせる |
| サポート詐欺 | 「ウイルスに感染しました」という偽の警告を出して電話をかけさせる |
| アカウントの乗っ取り | パスワードの使い回しを狙う |
IPA(情報処理推進機構)によると、サポート詐欺は、本物に見せかけた警告を画面に出し、電話をかけると遠隔操作されて有償のサポート契約と支払いへ誘導される手口です。支払いはプリペイドカードを指定されることが多く、被害額が数十万円になった例もあります。大事なのは、表示された番号には絶対に電話をしないことです。電話をかけなければ被害は発生せず、偽の警告画面は閉じるだけで対処できます。
画面が閉じられなくなった時は、IPAが案内している次の方法を試してください。
- キーボードのESCキーを3秒ほど長押しして、全画面表示を解除する
- 画面右上に出た「×」ボタンを押して閉じる
- それでも閉じられない時は、ブラウザを強制終了するか、パソコンを再起動する
セキュリティソフトは本当に売れているの?
国内のサイバーセキュリティ市場は、矢野経済研究所の調査で次のように伸びています。被害の広がりを受けて経営層の意識が変わり、これまで投資に消極的だった中堅・中小企業にも投資が広がっているそうです。
| 年度 | 市場規模 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 2025年度 | 1兆9471億円 | 9.2%増 |
| 2026年度(予測) | 2兆1220億円 | 9.0%増 |
ただし、これは主に会社向けの数字です。個人が家電量販店などで買う数や、相談が増えているという数字は、調べた範囲では見つかりませんでした。「売れている」の中心は法人向けと考えるのが、確認できた範囲では正確です。
Windows標準のセキュリティで足りる?
個人で使うパソコンなら、Windowsに最初から入っているMicrosoft Defenderで基本的には足ります。第三者機関のAV-TESTでも、2026年4月の家庭向けテストで、保護・性能・使いやすさの3項目すべて満点(合計18点)の「Top Product」でした。なお、満点を取った製品はほかにも複数あるので、Defenderだけが特別に優れているという意味ではありません。動作が軽く、追加の費用がかからない点も魅力です。
有料ソフトが役に立つのはこんな時
| こんな時 | 有料ソフトの強み |
|---|---|
| 家族のスマホやタブレットもまとめて守りたい | 1つの契約で複数の端末を一括管理できる |
| 子どものネットの使い方に制限をかけたい | 保護者向けの制御機能がある |
| ネットバンキングの守りを固めたい | 専用の保護機能がある製品が多い |
最初にオンにしたい「ランサムウェア防止」
Windowsには、ランサムウェアから大事なフォルダーを守る機能があります。ただし初期状態ではオフです。正規のアプリまで保存をブロックしてしまうことがあるためで、使うなら自分でオンにします。
- スタートメニューで「Windows セキュリティ」を開く
- 「ウイルスと脅威の防止」を開く
- 「ランサムウェア防止の管理」を開く
- 「コントロールされたフォルダー アクセス」をオンにする
項目名はWindowsのバージョンで少し違う場合があります。オンにしたあと、普段使うアプリが保存できなくなった時は、そのアプリを許可リストに追加してください。
ソフトでは防げないこと
どのソフトを入れても、次の部分は防ぎきれません。むしろここを守れているかのほうが大事です。
| 防げないこと | 心がけ |
|---|---|
| パスワードの使い回し | サービスごとに変える |
| 更新の放置 | Windowsやブラウザの更新を放っておかない |
| 怪しいメール | 添付ファイルやリンクを開かない |
| 偽の警告画面 | 表示された電話番号に電話しない |
有料ソフトを選ぶなら
有料ソフトを買うなら、「何台を、だれが使うか」で選ぶのがコツです。価格は年額で数千円が目安です。例として、次の3つがよく名前の挙がる定番です。
| ソフト | 向いている人 | 特徴 |
|---|---|---|
| ESET HOME セキュリティ エッセンシャル | Windowsのパソコンを軽く使いたい人 | 動作の軽さと検出力が評価されている |
| ノートン 360 デラックス | 家族のパソコンやスマホをまとめて守りたい人 | 端末の一括管理、保護者向けの機能、クラウドのバックアップが付く |
| ウイルスバスター クラウド | 国内メーカーのサポートを重視したい人 | フィッシング対策や、なくした端末を探す機能がある |
パソコンが中心ならESET、家族のスマホも含めて守りたいならノートン 360 デラックスという選び方がおすすめです。これは筆者の選び方の一例で、各製品の特徴は一般的な評価をもとにしています。対応台数・価格・機能は年度やプランで変わるので、買う前に必ず各メーカーの公式サイトで最新の内容を確かめてください。
おわりに
攻撃が増えているのは確かですが、個人の場合は、まずWindowsの標準機能を使いこなし、更新とパスワード管理、怪しいリンクや偽の警告に反応しないことが基本です。そのうえで、端末の台数や使い方に合わせて有料ソフトを足すかどうかを考えれば十分です。
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