ナミハリネズミは人には聞こえない超音波を聞き取れる。交通事故防止に役立つかもしれない
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ヨーロッパに生息するナミハリネズミは、人間には聞こえない高音の「超音波」を感知できることが、最新の研究で世界で初めて科学的に証明された。
これまでナミハリネズミがどの程度の周波数を聞き取れるのかは正確には不明だったが、デンマークやイギリスの研究チームが調査した結果、20kHz以上の音をはっきりと聞き取れることが判明した。
この発見は、人が聞こえない音を利用して、頻発するナミハリネズミの交通事故防止のための音響装置の開発につながる可能性がある。
この研究成果は学術誌『Biology Letters』(2026年3月11日付)に掲載された。
ナミハリネズミの超音波感知能力を調査
ナミハリネズミが超音波を聞き取れる可能性は、以前から指摘されていた。
仲間同士で「キーキー」という高い音を用いてコミュニケーションをとる様子が観察されていたためである。
しかし、彼らの聴覚が実際にどの程度の周波数まで反応し、どのような仕組みで機能しているのかはよくわかっていなかった。
今回、研究の対象となったナミハリネズミはヨーロッパやロシア北西部に広く分布するハリネズミの一種で、別名ヨーロッパハリネズミだ。
日本でペットとして一般的なヨツユビハリネズミよりも大きく、体長は最大30cm、体重は1kgを超える個体も存在する。
南デンマーク大学や英オックスフォード大学などの国際研究チームは、ナミハリネズミの聴覚を解明するため、デンマークの野生動物救護センターで保護されていた20匹の個体を対象にテストを実施した。

脳波測定で超音波への高い感度があることを確認
その結果、ナミハリネズミは最大で85kHzという極めて高い音まで感知していることが判明した。
人間が聞き取れる音の上限は約20kHzまでである。これを超える音は「超音波」と呼ばれ、人間には聞こえない。
他の動物の上限と比較すると、犬は約45kHz、猫は約65kHzまでとされる。
今回の実験データにより、ナミハリネズミはこれらを超える超音波まで感知でき、特に40kHz付近の音に対して最も高い感度を示すことが明らかになった。
ナミハリネズミは、人間や犬や猫には聞こえない、あるいは聞こえにくい非常に高い音の世界を正確に捉えているのである。

超音波の感知を可能にする耳の解剖学的構造
ナミハリネズミが高い周波数の音を聞き取れる理由は、耳の内部構造にある。
研究チームが死亡した個体の耳を「マイクロCTスキャン」で解析し、詳細な三次元モデルを作成したところ、以下の3つの重要な特徴が明らかになった。
- 高密度で硬い耳小骨: 中耳にある小さな骨の密度が非常に高く、硬い構造をしていた。さらに、鼓膜と骨を繋ぐ関節の一部が固定(癒合)されていた。これらは、超音波のような非常に細かい振動をロスなく伝えるための特徴である。
- 小型のアブミ骨: 耳小骨の中でも最も奥にある「アブミ骨」が、非常に小さく軽量であった。骨が軽いことで、高周波の速い振動にも素早く反応できる。
- 短くコンパクトな渦巻管: 内耳にある、音を電気信号に変える「渦巻管(聴覚に関連する内耳の空洞)」が、他の哺乳類と比べて相対的に短く、コンパクトにまとまっていた。
これらの特徴は、超音波を頼りに活動するコウモリなどの動物とも共通しており、ナミハリネズミが進化の過程で「高い音の情報を効率的に脳へ送る仕組み」を手に入れていたことを物理的に証明している。

超音波を利用した交通事故防止装置への応用
この聴覚能力の特定は、ナミハリネズミの保護において重要な意味を持つ。
2024年、国際自然保護連合(IUCN)は個体数の急激な減少を理由に、ナミハリネズミを「準絶滅危惧」に指定した。
主な死因の一つは交通事故であり、イギリス国内では過去13年間で個体数が約46%も減少している。

今回の研究により、ナミハリネズミが「40kHz付近の音に敏感である」という具体的な数値が判明した。
この数値を基準に装置を調整すれば、人間には聞こえない音でナミハリネズミに警告を与える「音響装置」の開発が可能になる。
この周波数は猫にも聞こえるため、猫の飛び出し事故防止に応用できる可能性もある。
現在、研究チームは自動車業界と協力し、ナミハリネズミを道路や芝刈り機から遠ざけるための装置開発とテストを計画している。
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引き用元サイト: カラパイア
記事元url: https://karapaia.com/archives/593933.html
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