生きた細菌を「トランジスタ」に見立てた生体回路を開発、植物への応用を目指す
全体:5月:1週:1日:1

お気に入りに追加
植物が自ら周囲の環境を感知し、病害虫から身を守る未来が近づいてきた。
アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、生きた細菌を遺伝子操作し、電子回路で電気信号の流れを切り替えるスイッチ役の「トランジスタ」のように働かせることに成功した。
将来的には植物の葉や根に応用し、干ばつや害虫などを検知して、殺菌剤を作り出せることを目指している。
この研究成果は『Nature Chemical Biology』誌(2026年8月17日付)に掲載された。
1つの細胞から細菌のコロニーへ機能を分散
生き物の遺伝子を設計し直し、目的に応じた働きを持たせる研究分野を「合成生物学」という。
これまでの生体回路では、特定の物質を感知したり、その情報に応じて別の物質を作ったりする複数の機能を、1つの細胞の中に組み込む方法が使われてきた。
しかし、1つの細胞に多くの機能を詰め込むほど回路を複雑にすることが難しくなる。
遺伝子の働きを切り替える『転写因子』には使える種類に限りがあり、数を増やすと信号同士が干渉しやすくなる。
さらに、多くの回路を組み込めば、細胞がタンパク質を作る仕組みにも負担がかかる。
そこでマサチューセッツ工科大学(MIT)の生物工学科長、クリストファー・ボイト教授らは、回路全体を1つの細胞に作り込む方法をやめ、単純な役割を持つ細菌を別々の部品として組み合わせる方法を考えた。

5種類の菌株がトランジスタと配線の役割を担う
研究チームは、植物の表面などに生息するパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)という細菌を使用した。
研究チームは遺伝子操作によって、化学物質の信号に応じて出力を切り替える2種類の菌株を作った。2種類の菌株は、電子回路で信号の流れを切り替えるトランジスタと同じ役割を担う。
研究チームはさらに、トランジスタ役の菌株が出した化学物質を受け取り、次の菌株へ信号を伝える3種類の中継役も作った。
電子回路では配線を通って電気信号が伝わるが、生体回路では細菌が作る小さな分子が信号となり、コロニーから隣のコロニーへ移動する。
トランジスタ役2種類と中継役3種類を組み合わせた計5菌株が、回路を作る基本部品となる。
研究チームは新しい計算を行うたびに菌株を作り直さず、5菌株の配置と組み合わせを変えることで、異なる働きを持つ回路を作れるようにした。
細菌が回路として働き、計算も可能に
研究チームは、寒天を入れたペトリ皿の上に細菌のコロニー(細菌が増殖して目に見える集まりになったもの)を印刷し、隣り合うコロニーを約5mm離して配置した。
約5mmの間隔を空けると、信号となる分子はもっとも近いコロニーまで届き、信号を受け取ったコロニーが次のコロニーへ情報を伝える。
離れたコロニーまで一度に信号が届かないため、研究チームは情報が決められた順番で一方向に流れる回路を作ることができた。
研究チームは5菌株の配置を変え、複数の入力を処理する論理回路や、1つの入力信号を制御信号に応じて複数の行き先へ振り分ける「デマルチプレクサ(demultiplexer)」、2つの入力を足し合わせる加算回路などを構築した。
最大の加算回路では24個の細菌コロニーをつなぎ、複数の単純な機能を組み合わせることで、回路全体として複雑な計算を行えることを実証した。
ただし生体回路が1回の計算を終えるまでには約8時間かかるため、電子回路と比べると計算速度は非常に遅い。
だが植物は数日から数か月という時間をかけて成長するため、研究チームは一晩ほどで終わる計算でも、生物を制御する用途なら利用できると考えている。

植物が環境変化を感じとり、自ら身を守る未来へ
研究チームは将来、生体回路を植物の葉や根に配置し、農業に利用することを目指している。
細菌で作った生体回路を植物に配置できれば、細菌が干ばつや害虫などに関係する複数の信号を検知し、受け取った情報を回路で処理して、必要な反応を起こせる可能性がある。
研究チームは、植物の根で特定のストレスを検知した場合に、殺菌剤を合成する反応を起こす仕組みを応用例として挙げている。
なお、今回の研究では植物への実装まで行っておらず、研究チームはペトリ皿の寒天上に配置した細菌コロニーで生体回路を実証した段階だ。
MITの研究チームは今後、細菌で作った生体回路を植物の葉や根で働かせ、植物が周囲の環境を感知して必要な反応を起こす仕組みへの応用を目指している。
▼あわせて読みたい
・植物はイモムシに食べられそうになるとSOSを発しハチに助けを求める。その仕組みを解明
・農薬が不要に?害虫駆除の可能性を秘めた新種の線虫を発見
・植物は侵入者と戦う際、細胞を再プログラムして戦闘モードに突入する
・農薬の代わりにアリを使った害虫駆除が有効であることが判明
・培養肉の次は培養木材。植物細胞を培養して木材を作ることに成功
この記事のカテゴリ:サイエンス&テクノロジー / 植物・菌類・微生物
引き用元サイト: カラパイア
記事元url: https://karapaia.com/archives/623130.html
飛行機の貨物として運ばれる猫たち全てに愛情を注ぐ係員の姿に感動 (1750人)
カリフォルニアでエイに刺される人が続出!ビーチを歩くときは要注意(アメリカ) (1674人)
これまで知られていない火星隕石を発見。深部に眠る古代マグマの痕跡 (1613人)
約5億年前、海に降り注いだ大量のフンがカンブリア爆発を後押しした可能性 (1611人)
コロコロ楽し。落ちていたアルミ缶を転がして遊ぶ野生のハリネズミ (1286人)
アパート火災から3日後、飼い猫がクローゼットの中から無事発見される (1207人)
AIは人間の詐欺師より人を騙すのがうまい。心に寄り添い巧妙に操る (1179人)
古代ペルー時代の幻覚剤入りビールを発見。この酒で国民をコントロールしていた (1175人)
真夏の道路がイカまみれに!トレーラー横転で20トン超のイカが流出 (1019人)
ウクライナのセルゲイ・ポノマレンコは本当にタイムトラベラーだったのか? (959人)
推し
新着記事
- ロンドンから忽然と消えた巨大な人工の丘の謎
- 猫の爪から生まれた氷に張り付く最新ドローン
- ダ・ヴィンチのメモに潜む謎の虫!甲虫を描いた理由とは
- 旅先で見かける送電線の謎のオレンジボールの正体
- 古代エジプトの髪型は最高の身分証だった
- 金星に衛星がない理由とは?遅すぎる自転が招いた衝撃の結末
- 人間の甘えが招いた悲劇。国立公園のクマが殺処分された理由
- 天井から腕がニョキと生える最新の家事ロボットとは
- 並行世界の自分が行動を操る?物理学者の衝撃理論
- 5Gが繋がらない怒り!インドの村で起きた衝撃の事件
- 長いまつ毛を切る海外男性が急増中!男らしさを求めた衝撃のトレンド
- 人間のミニ脳をマウスに移植!驚きの神経ネットワーク形成
- クモ恐怖症の女性がハエトリグモにメロメロになった理由
- 南米の果てに眠る幻の巨人族パタゴンの謎
- 宇宙の謎「小さな赤い点」の正体をスパコンが暴く
- 古代エジプトに飛行機が存在した?サッカラ・バードの謎
- スマホでポチると空からマックが届く未来の上海
- ツタンカーメンの墓に隠し部屋か、眠るのはあの美女王か
- クローン羊ドリー誕生から30年、今の技術はどうなっている?
- 12年間座らずに立ち続けるインドの修行僧の秘密
- スタートレックのワープ戦術を物理学者がガチ検証!
- イエローストーンで発見された驚きの落とし物事情
- ただの毛玉が生きているように見える理由
- 2000年前の謎に迫る!鳥葬のルーツと古代の祭壇
- 真夜中の大パニック!火事を救ったガチョウの驚きの行動とは
- ハエの脳がマリオを動かす?!驚きの全脳マップ公開
- スコットランドで発見された2000年前の謎の石造建築
- 国民全員分の避難所?スイスの地下に隠された巨大シェルター網
- 転んでもすぐ立ち上がる!アヒル型AIロボットが話題
- 月はわずか数時間でできた?衝撃の新説
E.YAZAWA SPECIAL SELECTION
Supported by Rakuten Web Service







