
YouTubeチャンネル「もふもふ不動産」の動画で、AIの「Claude」を開発するアンソロピック(Anthropic)の、流出したと報じられたIPO(新規株式公開)の目論見書をもとに、同社の赤字や支払い義務、そしてAIバブルは崩壊するのかというテーマが解説されています。ここでは、動画で語られた見方を中心に、確かめられている事実をところどころに添えながら、内容をたどっていきます。
「6兆円の赤字」の中身
この動画では、報道で大きく取り上げられた「2025年度に約6.3兆円(420億ドル)の赤字」には、会計上の仕組みが大きく関わっていると言っています。赤字の約8割にあたる約5.1兆円は、将来発行する予定の株式の価値が上がったことで生まれた、会計上の評価損だという見方です。
会社の評価額が上がれば上がるほど、将来渡す株式の評価も上がり、そのぶんが負債や損失として重く計上される仕組みになっている、と説明されています。この評価損は、上場のときに株式に転換されればなくなる性質のもので、実際に手元から現金が出ていったわけではない、という話も出てきます。
一方で、現金の出入りをともなう本当の事業の赤字は約1.2兆円(80億ドル)で、6.3兆円よりは小さく見えても、かなりの規模の赤字であることに変わりはない、とも語られています。売上高は46億ドルに伸びたものの、費用や計算資源の代金が大きく、「1ドルを稼ぐのに2.75ドルを使う」ような、現金を燃やしながら走る状態だった、という見方も紹介されています。
確認できていること:ロイターが報じた目論見書の内容によると、2025年の純損失約420億ドルには約340億ドルの会計上の費用が含まれていて、これは将来アンソロピックの株式に転換される可能性のある資金調達の推定価値が上がったことを反映したもので、事業で実際に支出したお金ではないとされています。2025年の売上高は12倍の約46億ドルに増えましたが、過去の資金調達に関連する負債の評価損を除いた営業ベースの損失は80億ドルを超えたとされています。
急成長する売上と、見えてきた黒字
動画では、2026年に入ってからの業績にも触れています。4〜6月期などの直近の数字では、調整後の利益で黒字になり始めていると報じられている、という話が出てきます。
さらに、直近3か月の売上のペースを1年分に換算すると、約650億ドル(約9.7〜10兆円)の規模まで跳ね上がっていて、採算が急に良くなってきている、という見方が示されています。
確認できていること:ブルームバーグが報じた投資家向けの資料によると、2026年4〜6月期の売上高は前年同期の14倍以上の115億ドル超で、調整後の営業損益は黒字だったとされていますが、いずれも暫定の数字です。年換算650億ドル超という数字は、関係者の話として報じられた7月末時点の「ランレート」(直近の短い期間の売上を1年分に引き伸ばしたもの)で、4〜6月期の売上高を年換算すると約460億ドルになるとも指摘されています。
10年で約80兆円という支払い義務
アンソロピックには、今後10年ほどの間に、合計5,180億ドル(約80兆円)にのぼる支払い義務が積み上がっている、と動画では言っています。おもな支払い先として挙げられているのは、ブロードコムの1,600億ドル、グーグルの1,100億ドル、アマゾンの1,100億ドルです。
この契約の8割以上は、不動産のサブリース契約のように、計算資源を使わなくても決まった額を払わなければならない、途中で解約できない長期の契約だという見方が示されています。10年でならすと、1年あたりの支払いは約518億ドル(約8兆円)になります。
一見すると重すぎる金額に見えますが、直近の年換算の売上を実際に達成できれば、1年分の計算資源の代金はまかなえる水準に近づいている、と語られています。人件費などを考えると利益の余裕はほとんどなく、厳しい状態であることは変わらないものの、計算資源の代金が払えずにすぐに連鎖的な破綻が起きる、という最悪の状況は避けられつつある、という見方です。そのうえで動画は、AIバブルがすぐに崩壊する状況ではない、という結論を示しています。
確認できていること:ロイターによると、目論見書では、6社のパートナーと10年ほどの間にAIのインフラへ少なくとも5,180億ドルを支出する見通しで、その約8割は解約できないか、使った量に関係なく支払いが必要なものとされています。おもな相手先は、グーグルに少なくとも1,111億ドル、アマゾンに1,100億ドル、マイクロソフトに314億ドルで、ブロードコム関連の機器のリースについても、約1,612億ドルの支払い義務があるとされています。
企業向けが中心という強みと、OpenAIとの違い
アンソロピックの強みとして挙げられているのが、企業向け(B2B)が中心のビジネスであることです。企業のシステムへの組み込み(API)や、プログラミングを手伝うClaude Codeのようなツールなど、お金を払って使う利用者が中心のため、無料での利用が少なく、計算資源にかけたお金を回収しやすい、という見方が紹介されています。
これに対して、業界トップのOpenAIの財務は、さらに厳しいと語られています。動画によると、OpenAIの長期の支払い義務は、インフラを含めて約8,560億ドル(約130兆円)で、1年の支払いは売上の約2.4倍にあたる約1,700億ドル、毎年約1,000億ドル(約15〜16兆円)が足りない計算になるといいます。無料で使う一般の利用者が多い個人向け(B2C)が中心で、サーバーの費用がかさみやすく、ソフトバンクなどからの出資や、社債、借り入れでまかなっているため、アンソロピックよりも厳しい綱渡りを強いられている、という見方です。
確認できていること:ロイターによると、アンソロピックの2025年の売上高の4分の1近くは2社の顧客が占めていて、目論見書では、大口顧客の多くが長期契約に縛られておらず、支出を減らしたり止めたりする可能性があると注意をうながしています。OpenAIについては、フィナンシャル・タイムズなどが、計算資源の契約のために2026年7月に作られた同社の資料で、2030年までの計算資源とインフラへの支出が約8,560億ドル、2026年から2030年末までのフリーキャッシュフロー(手元に残るお金)が合計2,780億ドルのマイナスと見込まれていると報じています。
「お金を貸して買ってもらう」取引への心配
AI業界では、半導体やインフラを売る側が、買う側のAI企業にお金を貸したり保証をしたりして、自社の製品を使ってもらうという、循環取引のような構造が当たり前になってきている、という話が出てきます。
例として挙げられているのは、ブロードコムがアンソロピックに最大420億ドルを貸し、見返りにブロードコムが手がける半導体(TPU)を使ってもらう取引と、エヌビディアがOpenAIに関わる施設に最大1,050億ドルの保証をして、自社のサーバーを使ってもらう取引です。
2000年のITバブルが崩壊したときにも、通信機器のメーカーが、顧客の通信会社にお金を貸して自社の製品を買ってもらう構造があり、今のAI業界はそれとよく似ているとして、市場が警戒している、とも語られています。
確認できていること:ロイターの報道によると、ブロードコムは、株式に転換できる社債の形で、アンソロピックに最大420億ドルを貸すことに合意していて、目論見書では、ブロードコムが機器の供給元と資金の出し手を兼ねることについて「潜在的な利益相反」があるとしています。エヌビディアも、OpenAIがオハイオ州のデータセンターを借りるにあたって、賃料や電力の支払いの一部を対象に最大1,050億ドルの保証をすることに合意していて、同社のジェンスン・フアンCEOは、循環的な資金の流れではないと説明しています。
オラクルに向けられる視線
動画で、とくに気になる存在として挙げられているのが、オラクルです。データセンターを提供するインフラの側と、自ら借りて使う側の両方で、巨額の投資と借り入れを進めている、という見方が示されています。
電力不足などを理由に、支払いを遅らせてほしいという不可抗力の通知を出したことから、資金繰りを心配する声が出ているという話も出てきます。倒産に備える保険のような取引であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の価格が過去最大の水準まで上がっていて、株式市場でも注目されている、と語られています。
確認できていること:TechCrunchによると、オラクルは2026年9月、ニューメキシコ州のデータセンター計画「Project Jupiter」の開発会社に不可抗力の通知を送っていて、施設の稼働が目標の2028年に間に合わない場合に、支払いを遅らせられるようになるとされています。オラクルは、計画は予定どおり進んでいると説明しています。
電力とメモリー、サプライチェーンへの広がり
AI企業が結んでいる巨額の契約は、半導体やインフラの産業全体を支えている、という見方も紹介されています。投資家や利用者のお金がAI企業に入り、AI企業はクラウド事業者(グーグル、アマゾン、マイクロソフト、オラクルなど)に利用料を払い、クラウド事業者は半導体やメモリー、データセンターの設備を発注する、というつながりです。
もしAI企業が支払えなくなれば、クラウド事業者の代金が回収できなくなり、半導体やメモリーのメーカー、電力や設備への注文が取り消され、ドミノ倒しのように一気にバブルが崩れるおそれがある、と動画では言っています。お金だけでなく、データセンターに必要な電力や変電所が足りないことや、住民の反対など、物理的なインフラが詰まることで、支払いが増えたり遅れたりするリスクにも触れています。
SKハイニックスやマイクロンのHBM(AI向けの高性能なメモリー)やDRAMは、2027〜2030年分まで長期契約で売り切れている一方で、AI企業が倒れて契約の取り消しが起きれば、かつての「シリコンサイクル」のような値崩れがまた起きるおそれがある、という見方も示されています。今後見ておきたい点としては、大手企業の設備投資の見通し、データセンターの取り消しや遅れ、CDSの動きが挙げられています。
確認できていること:韓国のソウル経済新聞によると、SKハイニックスでHBMの販売を担当する幹部は2026年4月、今後3年間に同社に求められるHBMの需要が、供給できる量を大きく上回っていると話していて、顧客から中長期の量を確保したいという要望も大きく増えているとされています。
おわりに
数字の大きさに目を奪われがちな話ですが、赤字の中身や契約の性質を分けて見ていくと、受け止め方も少し変わってくるのかもしれません。AI業界のお金の流れは、これからもしばらく注目を集めそうです。
僕のひとりごと
正直、株とか投資とか財務の話になると、僕の頭の中には「?????」が大量発生します。
……とか言われても、数字がデカすぎて、もはや僕の金銭感覚では処理不能です。
80兆円って……いったい何を買ったらそんな金額になるんだよ。
そんな僕なので、今回のアンソロピックの話を見て、「えっ……Claude大丈夫なの???」と、ちょっと心配になったのも正直なところ。
というのも、僕自身はAIの中でもClaudeがかなり使いやすいんですよね。
文章を書いたり、ブログの記事を考えたり、コードを見てもらったり、いろいろ使っていると、「なんかClaudeって自分に合ってるな」と感じることが多い。
だから、もし会社がヤバいことになってClaudeまで「本日をもちまして終了します」とかなったら、僕としてはかなり困る。
「えっ、これからどうすればいいの?」と、パソコンの前で一人で固まる自信があります。
ただ、今回の話を見ていると、世間で言われている「6兆円赤字!」という数字だけで判断するのは違うみたいですね。
評価損がかなり含まれていて、実際の事業上の赤字とは別物。しかも売上そのものは猛烈な勢いで伸びている。
……ということらしい。
まあ、株も財務もサッパリ分からない僕が言うのもアレなんですが、「とりあえずClaude、今のところは大丈夫そうなのか???」という感じです。
もちろんAI業界全体がものすごい金額を動かしているので、何か一つ歯車が狂ったら、とんでもないことになる可能性もありそう。
でも僕としては、「AIバブル崩壊か!?」と言われても、今のところはClaudeを普通に使い続けたい。
結局のところ、
株のことは分からん!
財務も分からん!
80兆円なんてもっと分からん!!
なので今回のニュースを見ながら、「……まあ、頑張ってくれClaude!」と、完全に素人目線で応援している僕なのでした。
