今年のインフルエンザは、例年とは様子が違います。厚生労働省は8月28日、定点当たり報告数が流行開始の目安を超えたとして、今シーズンの「流行入り」を発表しました。まだ8月のことです。例年なら、流行は12月に入ってから始まるものでした。
最新の第44週(10月26日〜11月1日)では、全国の定点当たり報告数は10.26。注意報レベルの目安とされる10を、全国平均でも上回りました。「まだ11月だから」と思っていると、出遅れるシーズンです。
この記事では、公式の数字で今の状況を確認したうえで、基本の予防、ワクチンの時期の考え方、家に備えておく物、そして「かかったかも」と思ったときの目安をまとめます。難しいことは何もありません。元気な今のうちに、できることを済ませておくための記事です。

結論:今年は「まだ11月」が通用しないシーズン
- 今年の流行入りは8月。最新の第44週(10月26日〜11月1日)は定点当たり10.26で、注意報レベルの目安を超えた
- 予防の基本は、手洗い、咳エチケット、換気、湿度50〜60%、十分な休養。厚生労働省の指針も、この昔ながらの対策が中心
- ワクチンは発症と重症化を抑える効果があり、効き始めるまで約2週間。受けるなら、判断は早いほうがいい
- マスク、検査キット、体温計などの家の備えは、元気な今のうちに点検しておく。かかってからでは買いに行けない
今年の流行はどうなっているか
まず数字から。インフルエンザの流行の大きさは、全国約3,000か所の定点医療機関から報告される患者数で見ます。1つの定点あたりの平均が「定点当たり報告数」で、流行開始の目安は1.00です。
今シーズンの流行入りは、第34週(8月17〜23日)に定点当たり1.11となったときでした。感染症法が施行された1999年以来、2009年に次いで2番目に早い流行入りです(前年から連続して流行入りの状態だった2023年を除く)。昨シーズンの流行入りは第39週(9月下旬)だったので、1か月以上早い計算になります。
その後の推移は、第40週11.35、第41週12.81と上がったあと、第42週9.08、第43週9.49とやや落ち着き、第44週に10.26と再び増加に転じました。33の道県で前週より増えています。都道府県別では愛媛県が27.89で最も高く、北海道21.90、岩手県17.17、青森県16.63などが続きます。休校や学年閉鎖、学級閉鎖の措置を取った施設は、第44週だけで2,451施設でした。

例年、インフルエンザは12月〜3月頃に流行し、ピークは1月末〜3月上旬とされています(厚生労働省のQ&A)。今年は、その例年の物差しがそのまま当てはまらないシーズンです。「例年より早い」という前提で、対策も前倒しに考える必要があります。
基本の対策は、この5つ
厚生労働省が挙げる予防の基本は、地味なものばかりです。だからこそ、効きます。
1.手洗い。流水と石けんで洗います。外出から帰ったとき、食事の前、調理の前後が基本です。手指についたウイルスを物理的に除去する方法で、感染症対策の基本とされています。アルコール製剤(エタノール濃度80%前後)による手指衛生も、インフルエンザウイルスには効果があります。
2.咳エチケット。咳やくしゃみが出るときは、できるだけ不織布製マスクを着用します。マスクがない場面では、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を覆い、顔を他の人に向けないことが大切です。鼻水・痰などを含んだティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、手のひらで咳やくしゃみを受け止めたときは、すぐに手を洗います。
3.換気。室内ではこまめに換気します。対角線上にあるドアや窓を2か所開けると、効果的な換気ができます。常時換気設備(24時間換気)がある家は、止めずに稼働させておくのが基本です。
4.湿度の保持。空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。加湿器などを使って、適切な湿度(50〜60%)を保つことも効果的です(厚生労働省)。湿度計を1つ置いて、数字で見る習慣をつけると管理が楽になります。
5.休養と栄養、人混みを控える。体の抵抗力を高めるため、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心がけます。流行してきたら、特に高齢の方や基礎疾患のある方、妊婦、体調の悪い方は、人混みや繁華街への外出を控えるのが無難です。

ワクチンについて:時期の考え方
インフルエンザワクチンは、感染後に発症する可能性を低減させる効果と、発症した場合の重症化防止に有効と報告されています(厚生労働省)。特に基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられていて、ワクチンの最も大きな効果は、この「重症化」を予防することです。
ただし、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。「かかっても軽く済む」ための備え、と考えるのが正確です。
時期の考え方で大事なのは、効果が出るまでの時間です。厚生労働省のQ&Aでは、これまでの研究から、ワクチンの予防効果が期待できるのは接種した2週後から5カ月程度とされています。今から接種しても、効き始めるのは2週間ほど先。その分、判断は早いほうがよくなります。
例年の目安として、厚生労働省は「流行のピーク(1月末〜3月上旬)に備え、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましい」としてきました。今年はすでに流行が進んでいるので、まだ接種していない人は、かかりつけの医療機関に相談してみてください。65歳以上の方などは予防接種法に基づく定期接種の対象で、費用が公費負担される自治体もあります。費用や助成は自治体・医療機関によって異なるので、住んでいる市区町村への確認が確実です。
昨年接種した人も、油断はできません。ワクチンは、そのシーズンに流行することが予測されるウイルスを用いて製造されています。昨年の分とは中身が違うので、今年の接種を検討するのが基本です。
家に備えておく物
かかってから買いに行くのは、本人にも周りにも負担です。元気な今のうちに、家の中を点検しておきます。備えのリストは、この6つです。
☑ 不織布マスク(家族の人数分と、少し多めの予備)
☑ インフルエンザ抗原検査キット
☑ 手指消毒用のアルコール製剤
☑ 体温計(電池の残量も一緒に確認)
☑ 経口補水液など、熱が出ても飲みやすい飲み物
☑ ティッシュと、口を閉じられるゴミ袋
検査キットは、薬局やドラッグストアで買える「体外診断用医薬品」と表示のある製品を選ぶのが基本です。使うタイミングの目安は、次の章で説明します。家族の人数分とは言いませんが、発熱のピークが重なる場面を考えると、複数回分の用意があると安心です。
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湿度の管理には、加湿器が手軽です。すでに持っている家は、フィルターやタンクの汚れを今のうちに点検しておくと、本番で慌てません。寝室など、湿気がこもりにくい部屋用に小型タイプを追加するのも手です。
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かかったかも、と思ったら
急な高熱、関節の痛み、強いだるさ。インフルエンザらしい症状が出たら、まず無理をしないことです。人混みへの外出を控え、無理をして学校や職場等に行かないようにします(厚生労働省)。安静にして、睡眠と水分をしっかり取るのが回復の土台です。
検査のタイミング。抗原検査は、発症して間もない時期はウイルス量が少ないため、感染していても陰性になることがあります。医療機関の案内では、発熱から12時間ほどたってから検査を受けることが一つの目安とされています。ただし、これは「12時間待たなければ受診してはいけない」という意味ではありません。高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪ければ、時間を待たず早めに受診してください。
薬の効く時間。抗インフルエンザウイルス薬は、適切な時期(発症から48時間以内)に使用を始めると、発熱期間が通常1〜2日間短縮されるとされています(厚生労働省)。検査の目安が「12時間」、薬の目安が「48時間」。この2つの数字のあいだで受診できると、治療の選択肢が広がります。使うかどうかは医師の判断です。
早めに相談したい人。高齢の方、基礎疾患のある方、妊婦、免疫機能が低下している方は、重症化しやすいとされています。我慢を重ねず、早めに医療機関へ相談してください。小さなお子さんについては、インフルエンザにかかると、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする等の異常行動を起こすことがあります。自宅で療養する場合は、治療が開始された後、少なくとも2日間はお子さんが一人にならないよう配慮を(厚生労働省)。
解熱剤の注意。子どものインフルエンザでは、アスピリンなどのサリチル酸系、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸といった成分の解熱剤は、インフルエンザ脳症との関係から使用を避けるべきものとして、厚生労働省が注意を呼びかけています。家にある解熱剤を自己判断でお子さんに使わず、医師や薬剤師に相談してください。比較的安全とされているのはアセトアミノフェンですが、これも必要なときに最小限の使用にとどめるのがよいとされています。
家族にうつさない。ウイルスは、発症前日から発症後3〜7日間ほど、鼻やのどから排出されるといわれています。排出量は発症後1〜3日が多く、解熱したあとも排出は続きます。症状のある人はマスクを着用し、看病する側もマスクと手洗いを徹底します。タオルの共用は避けましょう。なお、学校の出席停止期間は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」と定められています(学校保健安全法施行規則)。大人の職場復帰は、勤務先の決まりを確認してください。
僕のひとりごと
この記事を書く前に、わが家の備えを点検してみました。マスクはありました。去年の残りが、引き出しの奥に1箱。ただ、開けてみると個別包装ではないタイプで、少しほこりをかぶっていました。使えるけれど、気持ちのいいものではありません。
一番まずかったのは体温計です。スイッチを入れたら、電池の残量マークが点滅していました。熱が出てから電池切れに気づくのが、一番困るパターンです。ボタン電池の予備を買って、体温計と同じ場所に入れておきました。
僕は防災の備蓄もときどき点検していますが、感染症の備えは別物だと思い込んでいました。でも、並べてみると重なる物が多い。水、マスク、消毒、電池。防災備蓄の点検日に、感染症の備えも一緒に見る。それで十分回る気がします。
流行入りが8月という年です。「まだ11月」という言葉は、今年は合言葉になりません。点検は30分で終わります。元気な今のうちに、どうぞ。
まとめ
- 2026-27シーズンの流行入りは8月。最新の第44週(10月26日〜11月1日)は定点当たり10.26で、注意報レベルの目安を超えた
- 予防の基本は、手洗い、咳エチケット、こまめな換気、湿度50〜60%、十分な休養と栄養(厚生労働省の指針)
- ワクチンは発症と重症化を抑える効果があり、効き始めるまで約2週間かかる。まだの人は早めに医療機関へ相談を
- 家の備えは、マスク、抗原検査キット、手指消毒、体温計(電池も確認)、経口補水液、ティッシュとゴミ袋
- かかったかもと思ったら、検査は発熱から12時間ほどが目安、薬は発症から48時間以内が目安。子どもの解熱剤は自己判断で使わない